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読書百遍

これまでの「読んだ本の内容を覚えていない」という、悲しい読書からの脱却を目指し、「熟読」「再読」「アウトプット」の読書を目指しています。    (穴があくまで本を読む改題)

白取春彦『仏教「超」入門』

白取春彦
仏教「超」入門』白取春彦 「縁起を知り、空を知る」

  

仏教「超」入門』には仏教のエッセンスが実に明確に書かれている。そして現代の日本の仏教の問題点、日本人の仏教に対する理解の誤りを指摘していて、入門書としては最適だと思われる。

 

悟りとは何か?

「悟りとはブッダの説いた仏教的真理を理解し、身につけること」

 では仏教的真理とは何か?

「縁起を知り、空を知る」

 すなわち、

「現実を大切にする」

 

「縁起を知り、空を知る」ことを理解し、煩悩から自由になる。

仏教では「人生とは苦しみである」として、世界は自分の思い通りにはならないということを知ることからはじまる。そして、私たちの心に苦しみをもたらす原因を知り、それにとらわれずに生きる。それは過去だけでなく未来についても思い悩まないこと、徹底して現在を生きることだ。まずは「縁起」から見てみたい。

 

「縁起」とは、関係性のことであり、「この世のあらゆるものが、関係性においてのみその存在が確かめられている」としている。

 

この世の中のいっさいがあなたという存在を支えている。同時にまた、あなた自身が他の人や物の存在を支えているのである

 

この世のあらゆることは縁の中での出来事であり、自分一人では成り立たない。結局すべてがいただきものだと知ることによって、湧き上がってくるものは感謝の気持ちである。同時に、同時に自分自身は他の人や物の存在を支えているのであるから、自分の生き方、命を大切にしなければならないのだ。

 

この考え方では現状に対する不満を、縁起のせいにすることができる。悪い縁起を断ち、良い縁起をつくればいい。つまり過去にさかのぼって、自分の心のありようや行いを考えると、そこに原因を見出すことができる。ならば、その原因を断ち切ること、考え方や行動を改めることができれば、良い縁起をつくることができるのだ。これは非常に前向きな考え方で、自分の未来を自分で切り開くということだ。

ただし気を付けなければならないのは、未来を意識しすぎないことだ。先のことを考えすぎると、利己的な行動につながる可能性があるだろう。この人と付き合っておけば将来役に立つだろう、などと損得勘定ばかり考えて生きていては、決して良い縁起をつくり出せないだろう。未来に良い縁起をつくろうと考えて行動するのではなく、未来にとらわれず、現実を大切に生きる。その結果としてやがて良い縁起をつくることができる。そう考えること必要なのだろう。

 

そして「空」を知ることだ。

そこに見えているものには「実体がない」ということを意味すると同時に、現象の「有」を意味している。「現象が相互に限定したり、依存したりすることによって」生じるのである。つまり、縁起によって生じるということである。

「空」の理解は難しいが、すべてのものは周りとの関係性、縁起によってのみ初めて存在する相対的なものである、ということか。ならば周りのものも、もともと「空」であるから、一切は「空」であるともいえるのだろう。

そして「時間ですら空である」ことを知ることは重要だ。時間に追われたり、こだわること、過去を引きずったり、未来について思い悩むことも煩悩でしかない。

「空」を理解することは、煩悩から自由になることにつながるだろう。

 

そして煩悩から自由になるということは、何にもとらわれないことだ。周りに煩わされることなく、苦悩のない生き方ができればそれが一番だ。しかし現実は思い通りにはいかない。煩悩は悟っても依然生まれてくるものだともいう。だが、物事の本質が「空」であることを理解していれば、見えている悪い物事が、実は自分の心の現れであることがわかる。周りに惑わされのではなく、自分の心を見直すことだ。

 

また白取氏は、本書において日本人の仏教に対する認識の多くは誤りであると指摘する。仏と神を混同する、ブッダが超能力や神通力を持っていたと考えることなどは基本的な間違いであるが、極楽浄土の世界があると考えることや、輪廻によって生まれ変わると信じることなども誤りである。極楽浄土とは煩悩から離れた状態の比喩に過ぎないし、仏教では輪廻を否定している。しかし、これらもブッダの教えに忠実であれば理解できる。未来のことにとらわれず、今を生きろとブッダは言っているのである。死後のことに思い悩むこともとらわれているのである。

 

結局のところ、日本の仏教というのは、形を変え本来のブッダの教えから乖離している、というのが白川氏の主張である。本来のブッダの教えに立ち返ること、「縁起を知り、空を知る」こと、時間にもとらわれずに今を大切に生きることが最も重要であろう。

 

「何にもおもねることなく、煩わされることなく、今のこの自分の人生を全力で生きること」

 

この世の中のいっさいが自分という存在を支えていることに感謝し、今の現実を大切に生きたい。

 

 

仏教「超」入門 (PHP文庫)

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