読書百遍

これまでの「読んだ本の内容を覚えていない」という、悲しい読書からの脱却を目指し、「熟読」「再読」「アウトプット」の読書を目指しています。 

渡辺淳一「鈍感力」

渡辺淳一「鈍感力」(集英社文庫)

 

「鈍感力」は2007年のベストセラーで、当時の小泉総理が、「鈍感力が大切だ」などと発言されたことでも注目を浴びました。

しかし当時の私には理解できませんでした。鈍感とは感覚や反応が鈍いことですから、鈍感な人といえば気が利かない人、空気が読めない人であり、そんな人では仕事においても、日常の人間関係においても不自由するでしょう。また鈍感な人がいて困るのは周囲の人たちで、イライラさせられストレスが溜まるでしょう。

ですから私が目指すべきは、その反対である、敏感な人、気が利く人であろうと考えていました。

ところが、私も年齢を重ねるにつれ、おぼろげながら「鈍感力」の意味がわかってきました。慌ただしい日常の中で、全方面に敏感であり続け、気を遣っていたのでは体がもちません。ある程度は切り捨てていく必要がある、それが「鈍感力」なのではないかと思い、本書を手にしてみました。

渡辺氏は元医師であるので、医学的な観点からも言及されており、それが非常に説得力をもちます。

まず間違えてはいけないのは、「鈍感力」とは単に無神経で鈍感であることではないのです。

 

鈍感力とは、長い人生の途中、苦しいことや辛いこと、さらには失敗することなどいろいろある。そういう気が落ち込むときにもそのまま崩れず、また立ち上がって前へ明るくすすんでいく。

そういうしたたかな力を鈍感力といっているのである。

 

 

人生のあらゆる局面で必要な「鈍感力」ですが、私が特に注目したいのは次の3点です。

  1. 叱られてもへこたれない
  2. 会社で生き抜くための鈍感力
  3. 女性の強さ

 

まず1つ目の「叱られてもへこたれない」ことですが、精神面の強さとも言い換えられます。社会に出れば失敗したりミスをすることもあります。もちろん反省して繰り返さないことは大切ですが、いつまでもくよくよして、引きずっていたのでは前に進めません。嫌なことは忘れ、気にしないことは重要な「鈍感力」です。

 

2つ目は「会社で生き抜くための鈍感力」です。実際の職務について鈍感ではいけませんが、会社は毎日長時間過ごす場所であり、人間関係も難しいものです。どの職場にも周りを不快にさせる人はいるでしょうが、そういった中でもストレスなく仕事に専念出来れば仕事力も向上します。

「さまざまな不快さを無視して、明るくおおらかに生きていけるかどうか」

会社という組織、集団の中で逞しく勝ち残るためには、「鈍感力」が欠かせません。

 

最後に「女性の強さ」ですが、本書では女性について多くの章がさかれています。

一般的に男性と女性と比べると、ナイーブであるのは女性と思われがちですが、そうではないと渡辺氏は言います。肉体的にも、女性は出血に強い、寒さに強い、痛みに強い。この三つの特性は、神様(創造主)が、妊娠、出産という仕事をする女性だけに与えられた能力であり、子供を育てることは「鈍感力」なくしては到底できない。父親でさえも、自らのお腹を痛めて産んでいないので、母親ほどの「鈍感力」を持つことはできないのです。

 

こうした女性に対する記述を見ると、渡辺氏の女性観、恋愛観が垣間見られます。女性は強く、尊い存在であり、一方男性は弱くナイーブであるというものです。そして、文章のなかに女性への優しさが溢れていて、実際にも、おおらかな気持ちで女性に接していたのではと想像できます。それこそが渡辺氏の女性に対する「鈍感力」だったのではないでしょうか。

 

本書ではこの他にも、恋愛や結婚生活にも「鈍感力」が大切であると説きます。

先の見えない現代において、自分の人生をどう生きるのか。

周りに振り回されて自分を見失わないため、また前向きに明るく生きていくためにも「鈍感力」は必要です。

  

 

鈍感力 (集英社文庫)

鈍感力 (集英社文庫)

 

 

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